栞の窓


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山々に囲まれたこの小さな町も
午前と午後で風の向きが変わる

そしてその風は、この時期一斉に
咲くニセアカシアの花粉を、そこ
かしこに、まき散らす

お陰で工房の入り口は、常に黄色
い花粉が積もっている有様である

うっすらと積もった黄色い粉は
工房への来訪者の足跡をくっきり
と印していたり、時に雨が降れば
水たまりの模様となって様々な跡
を残している

せっせと玄関の掃き掃除をしながら
移り変わっては消えてゆく痕跡に
くしゃみが止まらない


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オーストラリアの火山から
吹き出されたマグマの中に
閉じ込められた苦土橄欖石

地球の内部60kmから400kmあたり
上部マントルからやって来たこの
オリーブ色の鉱物は、遥か宇宙の
オリオン星雲方面では、雨の様に
降っている所があるのだとか

1600光年離れた空間より、地球へ
届いたオリーブの光を解析した宇宙
鉱物学者は、まるで白昼夢の様なこ
の解析結果に、ある種の宇宙酔いを
覚えたのかもしれない


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産地を訪ねると、鉱物商のインド人
店主は、英語に疎い小生にも分かり
やすい口調で、ゆっくりと丁寧に教
えて呉れた。

「サウスインディア カルール ネ」

「thank you ありがとう」
とお礼を言うと、これまた丁寧に

「アリガト ゴジャイマス」

と返して呉れる。このやり取りが
なんだかとても嬉しい

些細なやり取りが、記憶に彩りを
添える様に、この紫水晶の紫色は
含まれる微量の鉄イオンによるも
のなのだそうです

 


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昔日から積日を経て、住み慣れ
た海ではなく、500万年後の土
中から掘り起こされ、まるで超
古代の聖遺物のごとき様相と
なった海胆である

思いもしない、想像だにしない
形で、後世の生物に愛くるしい
と思わせるこの残像は、我々に
成る事も有り得ると思うと、奇
妙な親近感で頭の奥がチリチリ
と疼く

 


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全ての色は光の反射の違いなの
だと知った時は、初めて日付が
変わる時計を目撃した時の様な
ぐらりと眼の回る感覚を覚えた
記憶が有る。

短波や長波のブラックライトを
照射すると、色の変化する蛍光
という特性を有する鉱物がある
我々が見ている世界は、その実
ほんの極々一つの側面だけなの
かも知れない

 


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一日に百万人以上が行き来する
駅の中、思いもよらない形で、
誰かが誰かの大切な記憶の一片
に成る事も、もしかしたら有る
のかも知れない。

広大に広がる、極彩色の点描画の
世界の中で、合い言葉は

สบายดีหรือ
サバイ ディー ルー

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