ルビーを使用したオーダメイドリングのご紹介です。

作品名: 紅瓮 べにほとぎ
地金:SV925
中石:ルビー オーバルファセットカット 10x13x4.5mm 6.53ct
表面処理:鏡面仕上げ K18YG(6:4)メッキ ※下地なし
リングサイズ:9号

お客様持ち込みのルビーを使い「クラシカルな昭和のジュエリー風のリングで金メッキを」とのご注文で制作させていただきました。


お預かりしました「裸石(ルース)」
内包物が個性的に入っている大ぶりのルビーでした。内包物の位置やクラック等は石留めに問題なしと判断しましたのでご注文を受けさせて頂きました。


デザインに付いて

いわゆるビンテージジュエリーと呼ばれる昭和のジュエリーを参考にデザインを展開させていただきました。今回制作決定しましたデザインは、石座の側面に細い線状の空間を放射状に入れる「千本透かし」をあしらったデザインをお選びいただきました。


制作風景

手持ちの空枠コレクションの「千本透かしのリング」を参考にして制作手順や必要な道具を考えるところからのスタートでした。

千本透かしの石座の構造は、「石が実際に収まる部分」「二段腰の隙間を作る部分」「千本透かしの部分」「千本透かしの下の部分」と4っの区分に分かれています。

「千本透かし」は糸鋸で成形します。糸鋸の太さはNo.6(厚み0.44mm)〜No.4(厚み0.38mm)で試し、キレイな透過の印象と強度が取れる幅をいろいろと試しながら進めました。

基本ノコ刃をかける時は潤滑剤として「ろうそく」を使っていましたが、今回のような精度が必要な作業の場合は「ミシン油」の方が仕上がりが綺麗な印象でした。

また、糸鋸を入れる間隔をけがいた後は、一度細いノコ刃で入り口部分のみガイドとして糸鋸を引いてから作業しました。


本番の千本透かしのパーツと、下に来る受けのパーツをロウ付けした状態

千本透かしの上部にロウ材が流れないようにロウ材は融点の高い3分ロウを、バーナーは基本下から当てて千本透かしの部分の温度が上がりすぎない様に作業しました。

腰の空間を作る支えのパーツと、石が実際に座る部分を組み合わせた状態

石を置いた状態。

爪を組み合わせた後ヤスリで成形。

リング部分と石座

リング部分と石座を組み合わせた状態

石留め

仕上げ後はメッキ業者さんへ外注に出します。メッキは下地のニッケルメッキは行わずに厚めの金メッキをお願いしました。


完成はこちら

今回制作しましたリングは、千本透かしによるルビーの輝きが石座へ留められて輝き続けるような不思議な印象を受けました。「瓮ほとぎ」とは昔に使用されていた水などを入れるツボのことです。出雲の祝詞に「夜は如火瓮(ほへな)す光(かかや)く神(かみ)(あ)り」とあり、明かりの器としても用いられていたそうです。今回、ルビーの輝きが留まる器という意味で「紅瓮 べにほとぎ」とさせていただきました。

今回のオーダーの機会をいただいて「千本透かし」という伝統的なデザインと向き合ってみましたが、その実昔のデザインという印象は一変しました。制作の部分では道具の使用や手順、パーツのバランス選択等様々な部分で大変勉強になりました。デザイン的にも、石への採光と魅せ方は群を抜いているという印象になりました。先人の先輩方の物凄さを肌で感じた制作期間でした。この「千本透かし」はこれからも詰めていき、オリジナルのアイテムへの展開が出来たらと考えています。

以上、ルビーを使用したオーダメイドリングのご紹介でした(´・ω・`)